novel ハトシェプストの時代 - WEBマガジン・アイシス編集者によるブログ。

プロローグ

環境破壊が進む今、「持続可能な社会」という言葉が、よく聞かれるようになりました。じつは世界四大文明のなかでもエジプトはもっとも長く続いた文明です。
為政者や政治が変わりながらも、農村には7千年前と変わらぬ風景が今もあります。

1999年に始めたオーガニックライフマガジンの名前を「アイシス・ラテール」としたのも、世界でもっとも長く続いたエジプトこそ、ふさわしいと思ったからでした。
「アイシス」とは、エジプトの女神の名前(イシスとも言う)です。
なぜ、エジプトは世界の文明のなかでももっとも長く続いた文明だったのか?
そんな問いを抱いて、二度のエジプトを取材する旅をしました。

その取材で、とくに興味深く感じたのは、ナイル川は年に一度、氾濫する川であり、古代エジプトでは、ナイル川の洪水をコントロールしようとしなかったという話でした。
古代エジプト人は、洪水は、アフリカの高地の森から栄養分を含む土を運んでくることを知っていたのです。そのために何千年にもわたって世界一肥沃な土地を維持することができたのでした。
いっぽうメソポタミア文明やインダス文明は、川をコントロールして、大規模な灌漑用水路を作ったりしたがために、塩害という問題が起き、早々と砂漠と化してしまいました。

その世界一長く続いたエジプトに、世界最初の平和貿易をしたエジプト女王がいました。今から3千5百年前ですから、日本では縄文時代になります。その女王の名前は、ハトシェプスト。小説「ハトシェプスト」は、古代エジプトを舞台に、平和と英知、そして愛を生きた一人の女性の姿を蘇らせたいという思いで描く物語です。

エジプトのルクソールにある「ハトシェプスト葬祭殿」。